2000年前後、いわゆる「就職氷河期」と呼ばれた時代。私は、甲南大学に通っていたごく普通の学生でした。当時の私は、まさか自分が300社以上も応募することになるとは夢にも思っていませんでした。今回は、そんな私の就職活動の実体験を振り返りながら、就職氷河期という時代に感じたことを、少し丁寧に綴ってみたいと思います。
リクナビ登録から始まった就職活動
私の就職活動は、就職情報サイト「リクナビ」への登録から始まりました。今のようにスマホが普及していたわけでもなく、各社のWebサイトもまだまだ情報が少ない時代でした。それでも、オンラインでエントリーできる環境が整い始めていたのは、当時としてはかなり先進的だったと言えるかもしれません。
けれど、応募した企業の数は最終的に300社以上。今振り返っても、我ながらすさまじい数字です。そして、その多くが書類選考の段階で「お祈りメール」すら届かず、ただただ落とされていきました。
夢見た大手企業、現実は「秒で不採用」
就職活動の初期、私は関西に本社を構える大手企業にも果敢に応募していました。パナソニック、ダイキン工業、伊藤忠商事、武田薬品、村田製作所など。今考えれば、いずれも日本を代表する超一流企業ばかりです。
しかし、結果は散々でした。まさに「秒で祈られる」。エントリーした途端にお祈りメールが届くという有様で、「あぁ、これがいわゆる学歴フィルターか」と思い知らされました。でも、それが社会というものなんだと、自分に言い聞かせながら先へ進むしかなかったのです。
手書き履歴書に込めた想いと絶望
リクナビでオンラインエントリーができるとはいえ、多くの企業は今でも「手書きの履歴書」の提出を求めてきました。これが本当に面倒で、正直、何枚書いたのか覚えていないほどです。
就職活動が長引く中で、履歴書を書く手にも力が入らなくなっていきました。書いても書いても返事が来ない、あるいは「お祈り」ばかり。のほほんと学生生活を送っていた私にとって、これは大きな精神的ダメージでした。まるで社会から「あなたは必要ない」と突きつけられているような感覚です。
富士通が採用ゼロ!? 就職氷河期の現実
当時のニュースで強く記憶に残っているのは、富士通が例年500名採用のところ、採用ゼロもしくは数十名にまで縮小したという報道でした。これには衝撃を受けました。「今、日本は本当にやばい状況なんだ」と、身をもって感じた瞬間でした。
このような状況は、他の大手企業にも広がっていました。リストラの嵐、業績悪化、内定取り消し…。そんな中での就職活動だったのです。
情報が少なすぎた時代、印象で企業を選んだ
今でこそ企業の採用ページは充実しており、口コミサイトやSNSでも情報が手に入ります。しかし当時は、各企業のWebサイトも非常にシンプルで、採用情報以外はほとんど何も載っていない時代でした。
当然、社風や働き方など分かるはずもなく、「なんとなく良さそう」という印象だけで応募するしかありませんでした。ある意味では、完全に“運頼み”のような就職活動だったのです。
Hotmailのアドレスに対する違和感
私は当時から「Hotmail」のメールアドレスを使っていたのですが、ある企業の面接で人事担当者から「このアドレスは怪しいですね。もっとちゃんとしたメールアドレスを使ってください」と言われたことがありました。
今でこそフリーメールアドレスを使うのは当たり前ですが、当時はまだ“フリー=怪しい”という認識が強かったようです。あの一言は、若い自分にとってかなりショックでした。「社会って、こんなにも価値観が古いのか」と、戸惑ったのを覚えています。
面接にすら呼ばれない現実
就職フェアにも何度も足を運びました。履歴書を片手に、何社ものブースを回り、企業の方に頭を下げてまわりました。しかし、ほとんどの会社からは面接にすら呼ばれませんでした。
履歴書がどんどん減っていく一方で、「このままどこからも声がかからなかったらどうしよう」と不安が募る日々。社会から完全に見放されたような気持ちにもなりました。
振り返って思うこと
今こうして過去を振り返ると、「本当によくあの時代を乗り越えたな」と思います。300社以上も応募して、何度も何度も落ちて、それでもあきらめずに挑み続けたあの頃の自分に、心から「おつかれさま」と言いたいです。
就職氷河期は、単なる“時代の流れ”では片付けられない、個人にとっては非常に重い現実でした。そして、私のように苦しんだ人が全国に大勢いたはずです。
今の若い世代には、ぜひ「就職できるのが当たり前」ではないという過去があったことを知ってほしい。そして、もしうまくいかないことがあっても、「それはあなたのせいじゃない」と伝えたいです。
最後に
特別なスキルもなかったけれど、それでも一歩ずつ社会に出ることができました。当時の悔しさや苦しさは、今となっては糧になっています。
この記事が、同じように就職活動で悩んでいる人、またあの時代を生き抜いた仲間たちへのエールとなれば幸いです。
コメント