7月になっても決まらない日々
私が就職活動をしていた当時、すでに大半の企業は一次募集を終えていました。周囲の同級生たちも、早い人は春のうちに内定を決めており、キャンパスの空気はどこか焦燥感に包まれていました。
そんな中、7月に入っても私はスーツを着て企業を回り続けていました。毎日が面接と筆記試験の繰り返し。まるで終わりのないマラソンを走っているような感覚でした。
今でも強く記憶に残っているのが、「アグレックス」という企業との出会いです。
出会いは“二次募集”だった
アグレックスはすでに一次募集を終えていたものの、追加で“二次募集”を行うという情報をキャッチ。なんとかエントリーを済ませ、綺麗なオフィスで会社説明を受けることができました。
説明会のあとの筆記試験。これがまた、想像以上にしんどかった。頭をフル回転させながら問題に取り組み、ヘトヘトになりながらもなんとか通過。
「よし、次は面接だ」と、自分を鼓舞しながら臨んだ一次面談。そこでの出会いは、今でも忘れられません。
若くてバリッとした社員との面談
面接官として現れたのは、若手の社員さん。スーツをビシッと着こなし、ハキハキと話す姿に、正直圧倒されました。
「かっこいいな……こういう人になりたいな」
そんな憧れを抱きつつ、少し緊張しながらも面談が始まりました。でも不思議と、話していくうちに緊張はほぐれ、これまでの面接の経験もあってか、自然とテンポよく会話が進んでいきました。
自分でも驚くほど、面接官と意気投合していたと思います。
「君みたいな人材を探していたんだ」
面接の中で、こんな言葉をかけられました。
「実は、君みたいな優秀な人材を採るために、うちは二次募集をしてるんだよ」
その瞬間、胸が熱くなりました。これまでの就活で、こんなに手応えを感じたことはなかった。何かが「ここだ」と感じさせてくれたのです。
面接を終えて帰る道すがら、気分はまさにノリノリ。内定をもらったような気分で、足取りも軽く帰路につきました。
しかし、待てども連絡は来ず…
その日から、私は携帯を肌身離さず持ち歩きました。「いつ内定の電話が来るのか」と、期待に胸を膨らませていました。
しかし、1日経ち、2日経ち、3日経っても連絡はありません。
「まぁ、きっと選考に時間がかかっているだけだろう」と思い、こちらから電話をしてみると──
「まだ結果が出ておりませんので…」
うん、そうだよね。あの手応えで落ちるはずがない。余裕の気持ちで電話を切りました。
でも、1週間経っても連絡はなし。
そして──届いたのは、まさかの「お祈りメール」。
オーマイガー! 祈られたーー!
もう叫びたい気持ちでした。
「うそだろ!? なんであれで落ちるんだ!? 俺、めっちゃ手応えあったのに!!」
まさに、自信満々の“会心の一撃”を放ったつもりが、相手に“かわされた”ような感覚。
頭が真っ白になるとは、まさにこのことです。
何がダメだったのか。
話しすぎたのか? ノリすぎたのか? いや、そもそも最初から落とすつもりだったのか?
考えても答えは出ません。でも、その時の気持ちは、今でも鮮明に覚えています。
「この戦い、終わらねぇな」
何社目の不採用通知だったか、もう数えるのもやめていた頃でした。
でも、負けたとは思わなかった。というより、負けたくなかった。
「こんなんで終われるかよ! オラオラオラ、どこまでもやってやる!」
もはや自分でも、疲れているのかテンションが高いのか、わからなくなっていました。
でも、不思議と涙は流れなかった。ただひたすらに、次へ、次へと進むしかありませんでした。
あの経験が、今の自分を作っている
20年以上が経った今、あの就活の記憶は、ただの「つらかった思い出」ではありません。
自分を強くし、諦めない力をくれた原点だと感じています。
たとえどれだけ手応えがあっても、結果が伴わないことはあります。
でも、それでも人は前を向いて進んでいくことができる。
あの夏、アグレックスの面談で感じた“高揚感”と“挫折感”。
それは、就職氷河期という過酷な時代を生きた証であり、人生の大きな財産でもあります。
いま、就職活動をしている若い人たちへ。
たとえ今がつらくても、そこで得た経験は必ずあなたの未来につながっています。
どんな結果でも、自分を信じて進み続けてください。あなたの道は、あなたが切り開いていくのです。
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