はじめに
就職活動は、人生を左右する大きな分岐点。
特に私たち就職氷河期世代にとって、内定がもらえるだけでもありがたい、という空気が確かにありました。
連日「お祈り」メールを受け取り続ける中、どこか一社でも拾ってくれるところがあれば…そんな心境で、企業を選ぶ目もどこか曇っていたと思います。
そんなある日、あの有名企業「光通信」の説明会に参加し、トントン拍子に一次面接通過。さらには口頭での内定のような話まで出ました。
今回は、その時の体験談を、当時の空気と今ネットで見える“事実”を交えて振り返ります。
熱気に包まれた説明会──でも何かが違った
光通信の説明会に参加したのは、都内の某ビルの一室。
対応してくれたのは、20代前半と思われる若い社員たちで、とにかく元気いっぱい。声も大きく、ノリも軽快で、まるで部活の延長のような雰囲気がありました。
彼らは「とにかくやる気があればOK」「若手が活躍できる」「学歴関係なし!」と、エネルギッシュに語っていました。
確かに、それは悪いことではありません。私自身も、当時は学歴や経歴にコンプレックスを持っていたので、「こういう会社に拾ってもらえるのはありがたい」と思ったのも事実です。
ただ、説明会での話が「どんな商品を売るのか」「どんな業務内容か」よりも、「気合」「根性」「負けるな」といった精神論ばかりだったのが気になりました。
「あれ?自分が志望してるのってソフトウェア開発系だったよな?」
パンフレットを見ても“営業職”の記載ばかり。ちょっと違うな…と思いつつも、祈られ続きで冷静な判断力を失っていた私は、そのまま応募してしまいました。
書類選考はまさかの即日通過──逆に怖い
そして驚いたのがそのスピード。
提出したES(エントリーシート)は、ごく簡単な志望動機を書いただけ。特別なスキルもアピールもなし。
それなのに、次の日には「一次面接のご案内」がメールで届いていたのです。
「え?こんなにすぐ通るの?」
当時は「やったー!」と単純に喜びましたが、今振り返ると、この時点でちょっとおかしかった。
普通ならある程度の選考やフィルターがあるはず。でも、ここは“数を集める”ことが最優先なのか、異常なスピード感で面接まで進んだのです。
面接会場は…まさに戦場のようだった
当日、面接に指定されたオフィスを訪れると、まず耳に飛び込んできたのは無数の電話の声。
「もしもし!光通信の●●と申します!」「お忙しいところ失礼しますっ!」──
これがテレアポの現場か…と一瞬で理解できました。
そして、そこで働く社員たちの挨拶がすごかった。「おはようございます」ではなく、「オスッ!」「ゾスッ!」という、まるで格闘技のような掛け声。
そこかしこでテンションは常にMAX。私はその時、「ここは会社なのか?」と本気で戸惑いました。
面接というより“勧誘”に近かった
肝心の面接は、こちらの話をじっくり聞くというスタイルではなく、「うちでやる気ある?」「1日100件くらいの電話、いけるよな?」「入社後すぐ合宿研修あるけど、逃げないよな?」といった、問いかけという名の圧。
まるで、こちらの覚悟を試すようなテンション。
しかも、「君、いいね。根性ありそう。もううちで決まりでいいよね?」といった口頭での“ほぼ内定宣言”まで飛び出しました。
もちろん、まだ最終面接も何も終わってないのに、です。
このあたりから、私の中で疑問が膨れ上がってきました。
「いや…なんで俺のこと何も知らないのに、“採用”って言葉が出てくるんや?」
「自己紹介も志望動機もほぼ話してないのに、なんで話がこんなに早いんや?」
「これって…引きずり込まれてる?」
ふと見渡したオフィスの熱気も、活気ではなく“狂気”に見えてきて、これはもう直感的に「ヤバい」と感じました。
そして、辞退を決意──「他社が決まりました」は嘘です
面接が終わって家に帰ると、迷う間もなくすぐに光通信に電話をかけました。
「申し訳ありません、他社から内定をいただきましたので…」
──もちろん、他社内定なんて嘘です。でも、正直に「なんか怖くなりました」とは言えませんでした。
でも今思えば、あの瞬間、私は自分の“感覚”を信じて行動していたのだと思います。
今ネットで見る光通信の“あの頃”
あの出来事から、数年が経ちました。
あるとき、ふと思い出して「光通信 評判」「光通信 ブラック」と検索してみたのです。
すると、出るわ出るわ…。
・異常な詰め文化
・離職率の高さ(数ヶ月で新人の大半が辞めることも)
・合宿での軍隊のような社訓読み上げ
・過労死、パワハラといった報道
・ブ○ック企業ランキングに連続ランクイン
まさに、あの時感じた「違和感」の答え合わせのようでした。
もちろん、すべてが事実とは限りませんし、部署や職種によっても異なるでしょう。
ですが、“そういう評判がネットに残っている企業”であることは間違いありません。
でも、今は違うかもしれない──そしてそれでいい
ここまで語ってきましたが、私の体験は199年の話です。
社会全体が“働き方改革”や“コンプライアンス強化”へと舵を切る中、光通信も企業として変わってきている可能性は十分にあります。
実際、最近ではホワイト化を目指す取り組みも見られ、口コミサイトでもポジティブな意見が増えているとの声もあるようです。
だからこそ、あの時の出来事をもって、今の光通信を一括りに判断するつもりはありません。
おわりに──「おかしい」と思ったら、一度立ち止まろう
就活中は、内定が欲しい一心で、冷静な判断を失いがちです。
でも、「なんかおかしいな?」と少しでも思ったら、それは大切なサインかもしれません。
有名企業であろうと、勢いがあろうと、違和感を見過ごしてはいけない。
そして何より、「直感を信じる力」は、自分の人生を守るための武器になります。
あの時、光通信の“内定”を辞退したこと。
そして、今こうして笑って振り返れること。
それが、私の小さな誇りです。
※この記事は筆者の実体験をもとに書かれています。当時の状況や空気感を再現しており、現在の光通信の実態とは異なる可能性があります。
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