はじめに
私は、ベトナム・ホーチミンで3年間の駐在生活を経験しました。この期間は、私の人生において非常に貴重な時間であり、日本人としてのアイデンティティを再構築し、異文化との協働に適応するマインドセットを体得する機会となりました。今回は、その経験を通じて得た気づきや学びを共有したいと思います。
異文化との出会いと戸惑い
2006年ホーチミンに赴任した当初、私は日本での生活とのギャップに戸惑いを感じました。街の衛生状態は日本とは大きく異なり、食事は現地の同僚と路地裏の屋台でとることが日常でした。月に一度は体調を崩し、病院にお世話になることもありました。最初は日本人医師に診てもらっていましたが、次第に英語を話す現地の医師とも信頼関係を築くことができました。
また、住んでいたアパートでは、夜になるとゴキブリが足元を這い回り、シャワーからは最初の2分間茶色い水が出るなど、日本では考えられないような環境でした。給湯器も安価なもので、お湯は5分が限界。水圧も弱く、頭を洗うのに20分以上かかることもありました。さらに、突然の断水や停電も珍しくなく、外でペットボトルの水を使ってシャンプーを続けることもありました。
写真:当時住んでいたところ

日本人としてのアイデンティティの再構築
こうした環境の中で生活するうちに、私は日本人としてのアイデンティティを見つめ直すようになりました。日本では、時間に正確であることや清潔さを重んじる文化がありますが、ホーチミンでは電車やバスが2時間遅れることもあり、時刻表はあくまで目安に過ぎません。最初は戸惑いを感じましたが、次第に「これも文化の違い」と受け入れられるようになりました。
また、日本人特有の気遣いや几帳面さも、異文化の中では必ずしも必要ではないことに気づきました。現地の人々との交流を通じて、柔軟な考え方やおおらかな心を持つことの大切さを学びました。
異文化との協働に適応するマインドセット
ホーチミンでの生活を通じて、異文化との協働に適応するためのマインドセットを身につけることができました。特に、相手の文化や考え方を理解し、受け入れる姿勢が重要であると実感しました。これにより、海外メンバーとのプロジェクトをリードする際にも、円滑なコミュニケーションを図ることができるようになりました。
また、衛生状態の悪い環境にも動じなくなり、過度な清潔さを求めることなく、現地の人々と同じように生活することができるようになりました。
ベトナムの人々の生活と価値観
ベトナムの人々は、日本人よりも豊かな生活を送っていると感じることもありました。現地の食材や果物、魚は安価で美味しく、家族や友人とのつながりも強く、パーティを開いたり一緒に出かけたりする機会が多くあります。また、仕事を最優先するのではなく、生活を楽しむことを大切にしている姿勢が印象的でした。
もちろん、ベトナムにも課題はありますが、日本人が必ずしも幸せであるとは限らないと感じることもありました。
子どもたちにも経験させたい異文化体験
このような経験は、一度はしておくべきだと考えています。特に、子どもたちにも異文化の中で生活し、さまざまな価値観や考え方に触れる機会を持ってほしいと思います。新しい環境で新しい仲間を作り、仕事は真面目に取り組みながらも、面白おかしく生きていく。そうした経験を通じて、異文化との協働に適応するマインドセットを自然と身につけることができるでしょう。
おわりに
ベトナム・ホーチミンでの3年間の駐在経験は、私にとってかけがえのない時間でした。日本人としてのアイデンティティを再構築し、異文化との協働に適応するマインドセットを体得することができました。この経験を通じて得た学びを、今後の人生や仕事に活かしていきたいと思います。
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